2/24「185(ひとはこ)読書会」レポート

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    2月24日、シャンソン物語さんに於いて開催された185(ヒトハコ)読書会。吹雪の日曜日にはせ参じた8名が、テーマ【鬼】にまつわる本を紹介し合いました。



    1.亡羊堂さん

    『神々の誕生』吉野裕子/著、岩波書店

     鬼門という言葉はよく聞くが、方角はどこなのだろう?という疑問からスタートしてこの本を読んだら、解以上に陰陽五行について広く知ることができました。結論から言うと、鬼門の方角は「北東」であり、十二支の中では丑寅の方角が鬼門にあたります。

     また、陰陽五行には季節も割り当てられており、冬と春の中間が鬼門にあたります。「鬼を追い払う」という考えは、鬼は悪者だからというわけではなく、鬼に退却してもらって順調に春が来るように、季節がうまく動くようにと考えが、鬼を追い払う・退治するというイメージにすり替わっていったからではないか、と著者は推察しています。

     陰陽五行の考えは面白く、割り当てられた動物を見ると、桃太郎の鬼退治の家来の動物は鬼の反対側にある動物が用いられていることがわかったりもします。



    『鬼の研究』知切光歳/著、大陸書房

     この本は、鬼のカタログ集と云ってよいでしょう。古本の世界では『天狗の研究』『仙人の研究』と並んで有名な一冊です。鬼とは何かという問いに答えはなく、朝鮮・インド・中国等、地域により鬼がどういうものとして扱われているかの解説も載っています。





    2.敷石屋さん

    『うる星やつら』高橋留美子/著、小学館文庫

     鬼といったらこれと「泣いた赤おに」しか思い浮かびませんでした。久しぶりに読んだら時代を感じたけれどやっぱり面白いです。



    『人生の救い』車谷長吉/著、朝日文庫

     一箱古本市@山形ではおなじみの車谷長吉さん、しかも、井上さんが一昨年からすでに取り上げていた、朝日新聞土曜版掲載の人生相談「悩みのるつぼ」の文庫化(この文庫は車谷さんの相談回答のみ掲載)。この本自体井上さんから借りて読みましたが、読み返したいので、自分用に購入しました。

     この人生相談は相談の内容や文章もすごいけれど回答がやはりすごい。「墜ちなさい」って、こんなの実行できないよ!的な提案満載。読み物としてのおもしろさ・すごさは知っていましたが、まとめて読むとなかなかどうして、「ああ、長吉さんの言うとおりだ」と思えてきます。今回のテーマの鬼ですが、自分に酷いことを言う人間に対して「鬼のような人だ!」と形容することがありますが、これだけ静かに、血も涙も苦悩も味わい知り尽くし表現できるにもかかわらず「鬼のようなひどいことをいう人」は、そういません。悩みはバッサリ斬られます。

     「阿呆になれ」、「人生に救いはない」、「質素な暮らしを心がけ自分より不遇な人を助けなさい」、「つらいことがあったときは、散歩したり童謡を歌ったり気晴らしをしながら生きなさい」と、解答の肝だけまとめると、回答全文とはまるで違うところに行ってしまう。

     しかし、自分の悩んでいたことがリセットされることは保証します。自分の悩みなど悩みじゃない、したいようにして、その責任をとればいい。ただそれに尽きることを、悲観的にではなく、おなかの底に落ちる経験ができます。お薦めです。





    3.あんさん

    『鬼の跫音(あしおと)』道尾秀介/著、角川文庫

    『骸の爪』道尾秀介/著、幻冬舎文庫


     新進気鋭の作家、道尾秀介さんの本を二冊紹介します。

     『鬼の跫音』は、人の心に住む「鬼」を取り扱った短編集。ホラーでもミステリでもなく、人の心の闇、悪意、黒い部分をピックアップして小説にしています。

     もう一冊の『骸の爪』は、仏様を作る工房で起きた殺人事件を描いた長編推理小説で、こちらはホラーもミステリもあります。仏様をつくっている職人さんが殺人を犯すところに鬼を感じたので、持ってきました。

     二冊とも、読んでいて気分が悪くなります。モヤっとして終わり、後味が悪く、そして、ヤミツキになります。清涼感ゼロですが、そこが好きです。





    4.池田さん

    『鬼が出た (たくさんのふしぎ傑作集)』大西広/著、福音館書店

     
    鬼にまつわるetcを綴った入門書的な一冊。児童書ですが、図版も多く、浅く広く大人の知識欲にも応える内容です。私の好きな風神・雷神が鬼として扱われていて不思議に思いましたが、図を見ると確かに外見は鬼であり、解説文には、仏教とは異なる宗教の神様が、仏様を惑わす存在の為、鬼として扱われるようになったとの説明がついています。見えないものを恐れること、畏怖の気持ちからからそのような存在として扱われるようになったのではないでしょうか。

     守り神的な存在、鬼をやっつけた鬼として登場する、鍾馗(しょうき)様など、興味深い鬼がたくさん登場し、絵巻も充実しています。世界の鬼、鬼みたいなもの、についても掲載されていて楽しめます。



    『鍾馗さんを探せ!! 京都の屋根のちいさな守り神』小澤正樹/著、淡交社

     もう一冊は、京都の瓦製の鍾馗さんを探す路上観察な本。京都では魔よけとして屋根に鍾馗さんを乗っけているお宅があります。置く場所も、鬼門に置いたり、お寺がある方向に向けて置いてお寺がはね返した鬼をまたはね返す為に置いたりなど様々で、眺めていると、愛きょうのあるコワモテの鍾馗さんの魅力にひたることができます。マップもついた、マニアックな方のまとめた一冊です。





    5.渡辺さん

    『暗鬼』乃南アサ/著、文春文庫


     一度疑い始めたら、際限なく疑う心が芽生えていく・・・。人間の心の弱さにすみつく「鬼」、ちょっと心が暗くなる本です。同じ著者の『晩鐘』という作品が面白かったので、とにかくこの著者の本を読んでみようと手をとったのがこの本でしたが、晩鐘とは違い、心理的に追い詰められていくこわい一冊でした。

     結婚し新しい家族になった奥様が主人公で、嫁いだ先の家族はとてもすばらしい家族であったのに、何かがおかしい、考えすぎだろうか、でも・・・と、どんどん疑う心が深まっていくのに、周囲からはあなたがおかしいと言われる。

     何を悪と言うのかはわかりませんが、疑う側から疑われる側に移行していく、心理的に追い詰められていくとこうなるという、”誰の心にもある暗い部分”が描かれていて、夜に読むと妄想が膨らんでいく、心に残る本です。精神状態が安定しているときに読んだほうがいいと思います。そうでないときに読むと精神的にぐらつき引き込まれそうになるかもしれません。私自身、精神状態がよくないときは読みたくないので、一回読んだきりです。



    『山田商店街』山田マチ/著、幻冬舎

     鬼というと暗い話が多そうなので、明るい鬼の話もご紹介します。山田町という架空の町の商店街を舞台にした、ヒジョウに面白い短編集です。ほぼ全部笑って読んでいられる一冊で、途中にちょっと鬼が出てきます。地獄の門を守る鬼の募集が出て、資格待遇がどうの等の記載があったりしたり、明るい鬼が出てきたりします。読んでいて楽しくなる本なので、すごくお薦めです。著者のホームページも面白いです。

    山田の書きもの http://www.yamadano.net/







    《脱線話・その1》

     現代は、ちょっとした気分転換として、手軽に読める読み物が求められている気がします。でも、冊数の多い古典なども、読むと面白い。面白いから六巻でも読める、というように読むのじゃないとおかしいと思う。古典だからと義務としてしかめつらして読むのでは辛い。古典と呼ばれるものも、当時は流行小説だったのではないか。太宰治でも夏目漱石でも、サイコスリラーとして、エンタメとして読んでいいのではないか。

     読書は義務で読むのじゃない、楽しいから、読んでいて面白いから読むものであるはず。







    6.ことさん

    『鬼』今邑彩/著、集英社文庫


     「鬼」検索で出てきた短編集です。日常にある人の心の暗いところを鬼として描いている話から、かくれんぼやだるまさんがころんだなどの子どもの遊びの鬼が出てくるようなあまり暗くない話まで、バラエティに富んだ一冊です。非常識なサイコ的狂った系の心の闇ではなく、誰の心にもある、自分の心の中にもある、身近な感じのする鬼の話を扱っています。

     現代で鬼の話となると、暗い話、心の中にある闇を扱う話になってしまうのでしょうか。古典だと、実際に鬼が出てきたりもしているように思いますが(伊勢物語の「芥川」など)。 










    《脱線話・その2》

     海外古典の翻訳者の違いによる内容の差、出版社による違い、趣旨によるイラストや挿絵等本のつく りの違いで、同じ本でも別なものとして受け取られる。万人にとってこれがいい、というのではなく、誰が読むのかによって、適した本は違ってくる。読む人が若い方なら、挿絵が多く読みやすいものが適しているかもしれないし、小説に馴染んでいる方なら、シンプルに文章・本文部分が読める物がいいのかもしれない。読む機会を得たものの、手に取った本が適切でなかったせいで、おもしろい古典の傑作を嫌いになられてしまったら嫌だな、と思う。










    7.井上さん

    『陰陽師』岡野玲子/漫画、夢枕獏/原作、白泉社

     「鬼」テーマですが、私もあまり思いつかなくて、本棚をあさったら出てきたのがこの本でした。すっごく面白いです。魑魅魍魎が跋扈する京の都で、陰陽師安倍清明が悪霊を退治します。呪いをかけたり呪いをかけ返したり。鬼を撃退する方法も、笛の名手が笛を吹いて鎮めたりするという世界観もいいなあと。

     美しい画にも注目で、全十三巻ありますが、続いていくうちに漫画家さんの独自解釈で世界が広がっているようで、どんどん何がなにやらというか、要素が多くなり難しく複雑になっていくので、理解の粋を超えているようにも感じます。じっくり読み込むと時間はかかりますが、楽しめると思います。





    8.嵐田さん

    『ヨーロッパの乳房』澁澤龍彦/著、河出文庫


     テーマの「鬼」について、日本の鬼の話が続いて食傷気味かなと思い、西洋の鬼、モンスターにまつわる本を持ってきました。紙月書房様から桃太郎の英語版を見せてもらったら、鬼が島の日本語訳が「モンスターアイランド」になっていました。西洋になると鬼はモンスターになってしまいますが、それだと軽いなあ、日本が持つ鬼という言葉に込められたドロドロとしたイメージとはずいぶん意味合いが変わってくるなあと思いましたが、その違いも面白いので、あえて西洋モノ、澁澤龍彦を持ってきました。

     今回紹介する本の表紙は、北イタリアにある貴族の庭園"ボマルツォの怪物"の写真が使われています。悪趣味といえばそうですが、見た途端「行ってみたい」と思いました。大きな洞窟のようになっていて、中に人が入れます。この中で人が談笑したり笑ったりすると、反響した音が門にあたる口のところから響き出て、このモンスターが笑っているように聞こえるという面白い造りになっていると書かれています。西洋におけるモンスターのイメージはこういうものなのかなと。

     澁澤龍彦はグロテスクなものか大好きで、一時期、著者の澁澤龍彦さんの描く悪の魅力や妖しいモンスターの世界にはまった時期があり、いつか紹介したと思っていました。ボマルツォの怪物の庭園に行くことが生涯の夢です。










    《脱線話・その3》

     モンスターと鬼の区別の話から、妖精、妖怪の違いは何かという話題に発展。海外では鬼も天狗も妖怪もモンスターくくりで一緒くたにされてしまうけれど、日本人である私たちにはデビルとモンスターの区別がつかないこと、宗教やギリシャ神話の絡みがあるから、西洋のデビルの概念はさらにわかりづらいこと、座敷わらしなどの妖精と、妖怪の土着性、泥臭さ生臭さでの判別など、何きっかけでカテゴリ分けされるのかと盛り上がりました。










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     今回会場として利用させて戴いた、老舗喫茶店シャンソン物語さま、女子ウケとても良いと思われます。日替わりコーヒーのカップはアンティーク調。ウィンナーコーヒーのカップはずんどうスタイルの素焼き調。自家製ワッフルはふわふわでおいしかったです。





     次回の読書会は初の課題図書を設定。山口瞳さんの「礼儀作法入門」。推薦者の弁は「古い世代のものなのだけれど、すごく面白いので、あえて今の若い方に読んで欲しいなと思います。どんなふうに解釈できるのか興味深いです。」とのこと。今回はすでに参加申込多数有。お申し込みはお早めに。





    2/24 「185(ひとはこ)読書会」開催のお知らせ

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      毎日雪、雪…今年は雪が多い…。

      そんななかでも開催されます、「185(ひとはこ)読書会」。

      今回は日曜日の開催です。



      日時:2月24日(日)14:00〜16:30頃

      場所:シャンソン物語

      テーマ:鬼



      ※事前に申し込みが必要です。

      申し込み先↓
      185yamagata@gmail.com まで。

      皆様、ふるってご参加ください!






      遅ればせながら・・185忘年会をリポート

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        「年に2回の一箱古本市開催」という華々しい(?!)2012年の締めくくりとして、

        12月27日に忘年会を開催しました。



        場所はイタリアンレストラン『イサオティーノ』。

        スパークリングの乾杯でスタートし、人参のマリネ、地元野菜の雪菜を使ったソテー(?)、焼き立てパリパリのピザなど、次々出てくるお料理はどれも幸せになれるおいしさ! 締めのデザートピザもクセになるお味でした。

        そんなおいしいメニューに夢中になりつつ、“ブック・オブ・ザ・イヤ−の紹介”と“本の交換”もありました。



        参加者みなさんのブック・オブ・ザ・イヤ−は、次の通り。



        ■敷石屋さん⇒「ある生涯の七つの場所」辻邦夫(新潮社)

        ■谷澤さん⇒「ピダハン」D・L・エヴェレット(みすず書房)

        ■笠原さん⇒「鬼談百景」小野不由美(メディアファクトリー)

        ■井上さん⇒「アラスカの詩 夢を追う人」星野道夫(新日本出版社)

        ■嵐田さん⇒「本を開いて、あの頃へ」堀部篤史(mille books)

        ■青翰堂分店さん⇒「さよならクリストファー・ロビン」高橋源一郎(新潮社)

        ■香澄堂さん⇒「日本の歴史を読みなおす」綱野善彦(ちくま学芸文庫)

        ■カムパネルラ書房さん⇒「旅のカケラ パリコラージュ」三枝克之(アスペクト)

        ■池田さん⇒「サキヨミ仕事術」吉山勇樹(アスカビジネス)

        ■亡羊堂さん⇒「ブックカーニバル」高山宏(自由国民社)



        持ち主に代わり、本たちが勢ぞろいして記念撮影したのがこちら↓

        2012bounenkai



        新旧の小説から人文書・旅本・ビジネス書等、様々な読書風景が透けて見えるラインナップでしたね。

        途中、東北各地の一箱古本市を転戦した亡羊堂さんから各地の一箱風景の報告等もあり、各自の本に関する思いがあちらこちらでアツく語られておりました。



        そして宴もたけなわ、最後は「本の交換会」へ。

        今回は「文庫・新書をメインに、手持ちから手離してもよいものを交換しましょう」というルールで持ち寄りを実施。

        順番にひとりずつ引き当てた包みをひらき、元の持ち主さんから簡単な本の紹介をいただきました。包みをあける時には、子供のようにワクワクウキウキです。

        一箱古本市のように、元の持ち主さんから新しい持ち主さんに本がバトンタッチされてゆきました。



        本の仲間との、にぎやかな時間を楽しんだ年末でした。


        みなさん、2013年もよろしくお願いいたします。






        12/10「185(ひとはこ)読書会」レポート

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           さて、師走にしてははや大雪となった夜。いつもの暖かい灯のついた紙月書房さんにて、定例の185読書会が行われました。今回のテーマは「山」。各人の山にまつわる思いのたけ?をたくさんご披露いただきました。



           最初にご紹介いただいた亡羊堂さんが「まずはこれでしょう」と取り出したのは、森敦「月山」。さすがは蔵書家さんで、渋い装丁の初版本です。同じく「月山」の文庫版を持ってきた嵐田にはその活字や行間の美しさがまぶしかったです。

           そして山と言えば本の山という亡羊堂さんが選んできたのは遠藤周作「イエスの生涯」。白くもったりとした皮装が施されており、日本では少ないタイプとのこと。一同、その感触を味わわせていただきました。

           そして、惜しまれながらも閉店した書店「松丸本舗主義」(青幻舎)も合わせてご紹介いただきました。







           次は笠原さん。山にまつわる怪談集「山の霊異記 赤いヤッケの男」がいちおしとのこと。遭難者のお化けが出てくるそうです。「オイ」と呼ばれて振り向いたら誰もいないなど、山に出るお化けの典型もあるとか。ただ山の怪談は、都市部が舞台のものと違ってある種の神秘性のようなものを感じるとのこと。それは古くから山が信仰の対象となっていたからなのかと考察されています。

           次にご紹介いただいたのは、山に関する詩歌から。
          新潮文庫、上田敏訳詩集「海潮音」よりカール・ブッセの

          山のあなたの空遠く、幸い住むと人のいふ

          岩波文庫、「若山牧水歌集」より

          幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅行く

          これらの詩歌から連想される山の向こうの未知なる場所へのあこがれ。山に囲まれて暮らしている山形人には共感できる部分があるのでは、とのことでした。







           次は井上さん。酒田市の佐藤要 編集・発行人の「山歩きの雑記帳 NO,14 鳥海山」。鳥海山は、井上さんが今一番登ってみたい山だそうです。山頂を目指すと一泊二日はかかると言われていますが、山頂が目的でなくても行程を楽しむ楽しみ方が綴られているとのこと。美しい写真がたくさん載っていて、憧れをかきたててくれます。

           もう一冊は山形県グリーン・ツーリズム推進協議会発行の「やまがた郷土料理探訪」。雪解けが始まると山菜に思いを馳せずにはいられないという井上さん。車に長靴、軍手を常備してドライブがてらに山菜採り。料理のレシピが満載のこの本で、採って楽しい、食べておいしい山菜の魅力を存分に味わえます。







           次の青翰堂分店さんは串田孫一「山の絵日記」(ダヴィッド社)をご紹介。なぜ山に登るのか?と問われて言葉に窮する気持ちを代弁してくれたとのこと。山の悦びは写真や言葉で表しがたく、山の中では沈黙してしまうというのにも納得したそうです。山好きのお父様によく山登りに連れて行ってもらったという体験が裏打ちされているのでしょうか。そして、この本は著者のイラストも見所です。山で絵を描き、時に笛を吹く著者のロマンチストな山男ぶりも魅力の一冊です。

           もう一冊は山のホラーサスペンス、北林一光「サイレント・ブラッド」(角川文庫)をご紹介。怪談もそうでしたが、山に対する畏敬の念とサスペンスは相性がいいのかもしれません。







           以上、やはりというべきか、各人の山への思い入れが随所に感じられた読書会となりました。そして、山は登ったり山の幸を採ったりして楽しむものであると同時に、敬い畏れるものでもあるという皮膚感覚のようなものを共有できた気がします。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。



          2012年12月10日(月)19時〜

          於:紙月書房

          テーマ:「山」

          参加者:亡羊堂さん、青翰堂分店さん、井上さん、笠原さん、嵐田






           


          12/10 「185(ひとはこ)読書会」開催のお知らせ

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            ご無沙汰してしまいました。すっかり寒くなりましたね。

            読書に最適な季節の到来です。

            さて、「185(ひとはこ)読書会」開催のお知らせです。



            日時:12月10日(月)19:00〜21:00頃

            場所:紙月書房

            参加費:600円(1ドリンク付き)

            テーマ:山

            (民俗学、山岳宗教、山岳小説、ミステリー、あるいは人生の山・・・などなど自由な発想でご紹介ください)



            ※事前に申し込みが必要です。先着8名ぐらいまで。

            申し込み先↓
            185yamagata@gmail.com まで。

            皆様、ふるってご参加ください!




            10/22「185(ひとはこ)読書会」レポート

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              一箱古本市をきっかけに始まった185(ひとはこ)読書会も、10月で一年を迎えることができました。今回のテーマは<食>。参加者6名が、それぞれ食にまつわる本を紹介しました。



               最初に嵐田さんがご紹介したのは絵本『ゼラルダと人喰い鬼』トミー・ウンゲラー著、評論社。朝ごはんに子どもを食べるのが楽しみの鬼は、料理といえば冷たいじゃがいもとキャベツのスープばかり。それが料理上手の少女ゼラルダに出会って、彼女の料理に夢中になり、子どもを食べることを忘れていきます。やがて二人の間に恋が芽生え、めでたし、めでたしとなるのですが、ラストのページに背筋が凍りつきます。

               もう一冊は、『和の菓子』ピエブックス。京都の和菓子が1ページごとに写真と説明がのっているアートブック。その日は青翰堂分店さんの京都みやげのお菓子が並んでおり、しばし和菓子の魅力について話が弾みました。




               次は亡羊堂さん。『グルメに飽きたら読む本』尾辻克彦著、新潮社。一時期、赤瀬川原平が小説家として“尾辻克彦”名で書いた本のうちの一冊だそう。何かと目の付け所に感心させられる赤瀬川さんですが、食についても同様で、「おいしさの絶対値というのはないのだ」「おいしさとは相対的なものである」との云いに、なるほど。



               次は伊藤啓子さん。『懐古的洋食事情(1〜4巻)』市川ジュン著、集英社。明治を迎え、日本の近代化にともなって洋食のあれこれが普及していくさまが描かれたコミック。トマトのことを赤ナスといったりと、西洋野菜の名前もおもしろいです。もう一冊は『蕭々館日録』久世光彦著、中央公論社。大正が去ろうとする時代、作家たちと彼らを見守る五歳の不思議な女の子が出てきます。宴の小道具のさまざまなおつまみが映像的に描かれています。



               ここで、紙月書房のご主人、高野さんからも一冊ご紹介いただきました。もともと料理が好きだったという高野さんは、学生時代に読んだ伊丹十三の『女たちよ!』文春文庫でスパゲティのゆで方を学んだといいます。アルデンテの概念を初めて知ったとか。しばし、伊丹十三作品の“食”について話が広がりました。



               次は青翰堂分店さん。『富士日記(下)』武田百合子著、中公文庫。武田泰淳の夫人として知られる百合子さんですが、作家の妻というよりひとりの生活人としてその感性の豊かさに憧れるとか。この本は、富士山のふもとの山荘での日々をつづった日記で、毎日食べた献立が記されていて、何の変哲もないお惣菜がとてもおいしそうに思えます。紹介した下巻では、夫の晩年が描かれています。年を追うごとに弱っていく夫の隣で毎日元気に食べ、笑い暮らす百合子さんの明るさ、強さが素敵だとのこと。

               玉子料理好きだという青翰堂分店さん。もう一冊は、玉子料理のアンソロジーで、『玉子ふわふわ』早川茉莉編、ちくま文庫。玉かけごはん、オムレツ、目玉焼き、温泉玉子、玉子焼きなどなどが紹介されています。




               次に初参加のカムパネルラ書房さんは『もの食う人びと』辺見庸著、共同通信社をご紹介。これを読んでカムパネルラ書房さんは「食べる」ということが自分の中で趣味になってしまっていて“生きるため”ではなくなっていたところにこの本を読んで、頭をガツンとなぐられたようなすごい衝撃を受けたそうです。自分の中の何かが一度壊れて、そこからきれいな花が咲いたような一冊だとか。読んでみたくなりますね。



               ラストは井上さん。まずは『雪と珊瑚と』梨木香歩著、角川書店をご紹介。珊瑚は21歳。赤ん坊の雪は7か月。二人暮らしで貯金も底をつき、八方塞がりの珊瑚に「赤ん坊預かります」のチラシが目に入ります。それが運命の出会いでした。その民家にはくららさんという女性がいて、雪を預かってもらうことになります。くららさんの作る料理は生きる力を与えてくれるようなもので、食事のシーンがたびたび出てきます。そこで様々な人々とかかわりながら珊瑚が再生していきます。

               もう一冊は、時間がないときに試したい!と、『花のズボラ飯』久住昌之原作、水沢悦子漫画、秋田書店をご紹介いただきました。





               以上、二時間にわたった読書会でした。バリエーション豊かな食にまつわるあれこれの本をご紹介いただきました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

               於:紙月書房 10/25 19:00〜





              10/22 「185(ひとはこ)読書会」開催のお知らせ

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                毎日暑いですね。
                ちっとも秋らしくないですが、暑さ寒さも彼岸まで、なのでしょう。きっと。お願いします。

                というわけで、読書の秋、「185(ひとはこ)読書会」開催のお知らせです。


                日時:10月22日(月)19:00〜21:00

                場所:紙月書房

                参加費:600円(1ドリンク+お菓子付き)

                テーマ:食


                テーマに沿った本を紹介しあう会です。

                これは!と思う本をぜひお持ちください。

                イメージは自由に広げてくださいね。


                ※事前に申し込みが必要です。先着8名ぐらいまで。

                申し込み先↓
                185yamagata@gmail.com まで。


                ふるってご参加ください!





                9/8 一箱古本市@山形「天気まつり」読書会レポート

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                  一箱古本市の前の晩・9月8日に、出店者による前夜祭というか打ち上げの代わりというか親睦を深めようということで、お酒を飲みながらの交歓会「天気まつり」を開催しました。

                  会場は山形市十日町の「味舞台 とくべい」。

                  出店者(南陀楼さん含む)のみなさまや、まなび館のスタッフの方々とお酒を酌み交わし、おいしい郷土料理をいただく楽しい会となりました。

                  そして…恒例のプチ読書会も開かれました。

                  以下、各店主のオススメ本をひとことコメントとともに紹介します。
                  (実際はひとことではなく、みなさまに熱くご紹介していただきました)




                  ,个辰燭蠅燭れ屋

                  渡部雄吉
                  『Criminal Investigation』

                  <おすすめポイント>
                  ドキュメント写真のはずだが、映画のワンシーンのような写真。装丁も美しい。





                  敷石屋

                  浅暮三文
                  実験小説『ぬ』

                  <おすすめポイント>
                  元コピーライター・浅暮さんの短編集。好き嫌い分かれるものもあるかとは思いますが、もっすごいツボなものが2-3件まざっています。
                  加藤静夫さんのこれからに期待。「ここのところ」とか、すごいです。ぜひおためしを!!






                  青翰堂分店

                  深沢七郎
                  『みちのくの人形たち』

                  <おすすめポイント>
                  ひょうひょうとした語り口にのせられているうちに、ヒンヤリこわ〜い奇妙な世界に連れていかれてしまいます。





                  ぅ張錺屮座

                  阿部完市句集
                  『荷物は絵馬』

                  <おすすめポイント>
                  俳句ってワカンナイ…という方、この句集でますますワカンナクなることまちがいなし!ほんのりコワイ句集です。




                  サ氾腸葦鷂兎

                  滝大作
                  『パン猪狩の裏街道中膝栗毛』

                  <おすすめポイント>
                  アングラでもサブカルでもない昭和芸人の裏街道の魅力!!






                  Ε魯ぅ咼好ス書房

                  沙村広明
                  『シスタージェネレーター』

                  <おすすめポイント>
                  「愛とは?」と疑問に感じている方はぜひ一読を!!






                  Г泙覆售曠好織奪奸η觚兇気

                  ナガオカケンメイ
                  『ナガオカケンメイの考え』
                  『ナガオカケンメイのやりかた』

                  <おすすめポイント>
                  デザイナーでなくとも、『デザイン』って何か知ることが出来ます。






                  亡羊堂

                  鶴ヶ谷真一
                  『書を読んで羊を失う』

                  <おすすめポイント>
                  私の屋号の由来を書名にしている本であり、迷わず購入しました。内容は本の本です。






                  はみだし書房

                  パンタ 笛吹
                  『ミステリーサークル・真実の最終解答』

                  <おすすめポイント>
                  人間の想像力は素晴らしい。行動力はもっと素晴らしい。ミステリーサークルの謎に対する飽くなき探求心が明らかにした衝撃の結末!!






                  古本けものみち

                  井上修吉
                  『H丸伝奇』

                  <おすすめポイント>
                  井上ひさしの父が小説を書いていたとは!それが山形で出版されていたとは!という驚きから新刊で買いました。

                  →中央印刷株式会社の紹介ページ(PDF)



                  185井上

                  土門拳
                  『筑豊のこどもたち』

                  <おすすめポイント>
                  土門拳記念館は一度行ってみる価値があります!セルフポートレイトで構成された空間は圧巻です。






                  まなび館スタッフ・村岡さん(と奥様)

                  松本大洋
                  『GOGOモンスター』

                  佐藤雅彦+ユーフラテス
                  『ぴったりはまるの本』







                  参加いただいたみなさま、ありがとうございました!





                  8/25 「185(ひとはこ)読書会」開催のお知らせ

                  0

                    8月はスペシャル!!
                    「185(ひとはこ)読書会」開催のお知らせです。


                    日時:8月25日(土)18:30〜20:30

                    場所:香味庵まるはち

                    参加費:2500円

                    テーマ:こわ〜いはなし


                    テーマに沿った本を紹介しあう会です。

                    これは!と思う本をぜひお持ちください。


                    ※事前に申し込みが必要です。先着8名まで。


                    申し込み先↓
                    185yamagata@gmail.com または リンク先画像の電話番号まで。

                    8/25・185(ひとはこ)読書会チラシ


                    ご参加お待ちしてます!


                    6/18 「185(ひとはこ)読書会」レポート

                    0

                      2012年6月18日(月)、紙月書房さんに於いて開催された185(ヒトハコ)読書会。参加者は11名。

                       テーマは【温故知新】。大辞泉には『過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくこと。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」と訓読する。』と書かれています。各人それぞれが温故知新という言葉で連想した本を紹介し合いました。





                      〇斡兇気

                      『雨の名前』高橋順子/著、佐藤秀明/写真、小学館

                       5月5日に開催された一箱古本市で青翰堂分店さんから購入しました。誕生月が6月のため紫陽花と雨が好きです。この本では美しい雨の名前が沢山紹介されています。手紙を書くとき文頭に一言添えたらおしゃれだと思いました。

                       雨の名前と、その意味や云われに添えられた、雨にまつわる風景写真は目に楽しく、合間に挿入されている詩人 高橋順子さんのエッセイは、しっとりと心に染み入ります。

                       この中で一番好きな雨の名前は「墜栗雨(ついり)」。梅雨入りが栗の花の散る時期と重なるためつけられた当て字とのことですが、音が好きだなと思います。あと、「漫ろ雨(そぞろあめ)」 ――― ぼんやりと降る雨、というのも、面白くて好きです。



                      『永遠の詩 (全8巻)2 茨木のり子』茨木のり子/著、小学館

                       もう一冊のおすすめ本。一冊目の本の著者である高橋順子さんが編纂した、茨木のり子さんの詩集。表紙には「自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ 」の文字が。







                      五十嵐さん

                      『山伏と僕』坂本大三郎/著、リトルモア

                       朝日新聞、日本経済新聞の書評を読み、写真入で紹介されていた著者の姿に「この人が山伏になったのか!」と興味を抱き手に取りました。今どきの若いイラストレーター男子が、山形出羽山での厳しい山伏の修験道にひきつけられる様子が、著者自身によるイラストと版画を交えて描かれています。

                       山伏の修行は一回死んで再生することだそうです。山伏の修行をすることと都会でイラストレーターとして働き暮らすことにより、田舎と都会、古い宗教と新しさを求められるイラストレーターという両極の価値観を、矛盾なくゆるーくとり入れ、古い中に普遍性を、価値を見出し、古いものの中で自分の生を取り戻していくライフスタイルは、新しいと思いました。







                      ――― ここでアクシデント発生!読書会の輪の中にスズメのヒナが参加していたことが発覚。

                      井上さん「千風さんの手の中にいるものと目が合った」。

                      伊藤さん、声もなく席を立ち後ずさり。

                      千風さん「来る途中に拾ってしまって」ずいずいずっころばしの形をした手の中から、スズメの顔が。鳥が苦手な伊藤さん、千風さんの隣の席から、少し離れた井上さんの席へ移動、席替え。





                      C翅爾気

                      『夜の神話』たつみや章/著、講談社

                      温故知新ということで、小学生のときに母に薦められ、自分が初めて読んだ本を再読しました。

                       お父さんが原発に勤めている小学生の男の子が主人公です。都会から田舎に引っ越しをして、そこで変わった神様と出会います。昨年震災の折にこの本のことを思い出し、停電の中で再読しました。昔読んだ時には主人公の目線のみで読んでいましたが、大人になった今読んでみると、以前とは違った目で物語を見ることができ、おもしろかったです。







                      ぐ羮紊気

                      『饗宴』プラトーン/著、森進一/翻訳、新潮社

                       大学のときに学んだものを再読してみました。哲学とはものの見方や考え方だと思います。大学の授業でアリストテレスを知り、面白いこと考えてるなあ!!とおどろきました。

                       この本では、宴席で、五人ぐらいの人間が愛について即興で話をします。愛の神の素晴らしさを称える中で、アリストパネースが語る昔の人間の姿についての話 ――― 男・女・両性の三種類があり、耳が4つ、頭が2つあり、今の人間二人が向き合い顔だけがそっぽを向いているような姿をしていたが、ゼウスの怒りに触れたことで真っ二つに斬られ、以後慎まないと更にもう二つに斬るぞと脅され(いまのところはまだ斬られていないようですね)、それ以後人間は自分の半身を捜し求めるようになった ――― は、いい考え方だなあと思いました。







                      ニ翰啼欧気

                      『なぜ古典を読むのか』イタロ・カルヴィーノ/著、須賀敦子/翻訳、みすず書房

                       「古典とは、人から聞いたり、それについて読んだりして知り尽くしているつもりになっていても、いざ自分で読んでみると、あたらしい、予期しなかった、それまでだれにも読まれたことのない作品に思える本である。」 だけど ――― 「古典は義務だとか尊敬とかのために読むものではなく、好きで読むものだ。」

                       こんな温故知新な一文のある一冊。但しここで言われている古典は、ホメロスのオデュッセイア等、読んでいない!という本もたくさんありました。ロビンソン・クルーソー、マーク・トウェインに触れた箇所では、あの本にはこんな一節があったのか、などとはっとさせられる切り口で提示されていて、楽しめます。



                      『イタリア民話集』イタロ・カルヴィーノ/編著, 河島 英昭/翻訳 岩波文庫

                       もうひとつのおすすめ本は、一冊目のおすすめ本と同じ著者編纂の民話集。「民話はどこの男女の身にも降りかかってくる宿命のカタログである」。 いわゆる古典も、民話も今でも通じる”普遍性”が共通にあるということで、今回のテーマにマッチしていると思って持って来ました。今回は、何のヒネリもない直球ど真ん中で、硬かったかもしれませんが、物理の話でなく、いいものは何でも「時間と空間」を超越しますね。



                      亡羊堂さん報告 ――― 岩手の一箱古本市に参加してきました。ジョークのつもりで持っていった「風の又三郎」の復刻版や、「海」の創刊準備号なども売れるなど、懐の深い古本市でした。








                      千風さん

                      『ブルータス(昭和55年8月1日発行・第二号)』/平凡社

                       温故知新という言葉を耳にすると、「古いものを大事にしよう」という意味に聞こえます。たしかにクラシック(原型)が出来ないと新しいことはできませんからクラシックは大事にすべきです。しかし、現在はクラシックと呼ばれているものが、当時の同時代の人からは否定されたアヴァンギャルド(異端)であったかもしれません。

                       良い物は良い、古いもので今もいいと思えるものが温故知新を体言しているものではないでしょうか。この雑誌の好事家(ディレッタント)という頁に登場する石黒敬七さんのアンティークの品々は、今見ても”ぜいたくな”コレクションだと感じます。

                       古い・新しいにとらわれない、いつみてもこれはいい、というものを見極めていくことが、大切なのだと思います。





                      О貌さん

                      『ひばり伝』斎藤慎爾/著、講談社

                       著者の斎藤慎爾さんは、若いうちに俳句ですごい賞をもらった飛島出身の方で、深夜叢書の創設者でもあります。

                       この本は美空ひばりの伝記です。私が中学生の頃にひばりはピークを迎えていたのですが、カーペンターズなどフォークが流行っていた時代に、コテコテで、暴力団がからんだ噂があったりしたひばりを、私は嫌っていました。しかしこの本には、この本の中には、”昭和”が入っています。

                       著者自身による文章は少なく、ひたすら引用で出来上がっている本で、読んでいて頭がパンクするぐらいいろんな本が詰め込まれていて、最初は読みにくいと感じるかもしれませんが、読むうちにどんどん読むことが面白くなってきちゃう、そんな一冊です。

                       著者は、冬の飛島で聴いたひばりの歌で救われたといいます。 「少なくともある時期の私の精神の内面劇は、ひばりの歌の劇伴なくしては語れないという気がする。美空ひばりの歌は人生の伴奏歌であった。(中略) ひばりを記述することは、遠のきゆく仮説を追求していくに等しいエネルギーを要するように思われる。」


                      ――― なぜか伊藤さんがひばりについて話し始めたとたん、スズメが盛んに鳴き始めました。







                      鶴谷さん

                      『現代語訳 福翁自伝』福澤諭吉/著、齋藤孝/訳、ちくま新書

                       あなたは「福澤諭吉」と聞いて何を連想しますか?私は一万円札の人、という印象だけでしたが、ある時、この人はどういう人なんだろうと思い、この本を手にとりました。斎藤孝さんが現代語訳にアレンジした文章は読みやすかったです。

                       福澤諭吉の自伝ですので、生い立ち、生き様が書かれているのですが、自分がもともと抱いていた福澤諭吉のイメージとは違って、ずいぶん”やんちゃな人”でした。子どものころから大酒のみだったり、皿を万引きして橋の上から船の芸者さんに投げつけたりするなどの悪戯もしつつ、大人になって士族のまま藩にとどまるのは嫌だと、熱心に勉強し、大阪・江戸・長崎にも出、当時隆盛だったオランダ語を習得するも、これからは英語の時代だと認識すると英語に切り替えてまた勉強し、慶応大学を創設して若手の教育にも熱心に取り組むなど、自分の信念を貫き続けた姿に感銘を受けました。

                       他人に批判をされても信念を曲げず、イメージした姿に近づけるよう努力を続け、新しい境地を切り開いていった福澤諭吉のことを知った上で改めて一万円札で見ると、新たな気持ちでその姿を見ることが出来ました。







                      笠原さん

                      『東北 不屈の歴史をひもとく』岡本公樹/著、講談社

                       震災が起きてからすぐに、東北に関する文学、歴史、宗教や精神等を扱ったいろんな本が出ました。それから一年が経って、またたくさん出ました。玉石混合のそれらの本の中で、東北の歴史を知るのにこの本は良い本だと思います。

                       東北は、征夷大将軍・坂上田村麻呂の征戦から始まり、戊辰戦争至るまで「五戦五敗」と言われるくらい派手に負けています。また、津波や噴火などの天災にも脅かされてきました。これから東北で生きていくために歴史を学ぼうという趣旨のとおり、東北の歴史を面白く読むことができました。ちなみに帯は伊坂幸太郎さんが書いています。



                      嵐田さん「東北でひとくくりにするには抵抗がある人もいる気がします。同じ県内ですら地域によりずいぶん違いがあります」

                      三橋さん「母方の実家の青森にも、青森と簡単にくくることのできない、津軽と南部が対立し続けてきた歴史があります」

                      亡羊堂さん「青森には旅行で行きましたが、八戸とその奥では雪の深さが違いました」

                      伊藤さん「寺山修司記念館には行かれましたか?」

                      亡羊堂さん「残念ながら」

                      伊藤さん「ぜひ車で行ってください。駅からはタクシーで行くしかありません(バスは季節運行)。私がタクシーに乗ったら、運転手さんから、寺山修司記念館に行く人はなぜか女の人が一人でお越しになることが多い、と言われました。しかもその日は自分以外に来館者もおらず、一人で”あの”人形を見てきました。かなり面白いので是非行ってみてください」







                      敷石屋さん

                      『大きい車どけてちょうだい』読売新聞大阪本社「窓」/著、角川文庫

                      昭和52年刊行の文庫。新聞の一角に設けられた、記者と読者の交流の場「窓」。折々の記事への感想、新聞社に寄せられた善意の寄付「地の塩基金」の広がり、思いがけず定番化してしまう「花の種差し上げます」、親を亡くした子どもたちに何かをしてあげたいけれどお金がないので、と鯉のぼりを託す人 ――― 今インターネットで広がりつつある文字を通じた人と人とのつながり、書き手と読み手の交流の姿が、三十五年前に存在していました。この本の中に見出される、善意を介して絡み合い連鎖していく人同士の繋がりは、再現が望まれる「新しい交流のあり方」だと思いました。







                      嵐田さん

                      『蒲公英草紙』恩田陸/著、集英社

                       知人が「眠るのも忘れて夢中になって読んだ」と話すのを聞いて読みたくなり、手に取りました。始まりの一文、「いつの世も、新しいものは船を漕ぎだす海原に似ているように思います」という文章が、今回の温故知新というテーマにぴったり合うと思ったので、今回紹介致します。

                       物語は明治維新の頃、福島を舞台にしています。不思議な能力を持つ常野一族を通して、新しいものと古いもの、西洋の音楽と日本の雅楽、日本画と洋画など、対比を交えながら物語は進んでゆき、太平洋戦争の終わり、敗戦のところで話はぷつりと終わります。

                       清潔で品のある古き良き日本人像を描き出している、という新井素子さんの解説も踏まえて頭を整理していますが、まだ自分の中で消化できていないように思います。





                      ***



                      今回は参加者多数により、初のタイムキーパー制、一人10分とゆるく区切りをつけての進行でした。

                       また、途中で紙月書房特製ベイクドチーズケーキ(美味!)をご馳走になりました。
                      紙月書房さん、いつもありがとうございます!

                       他人に見せてオーケーの情報盛りだくさんスクラップブック日記帳や、男友達のノートを借りて読んでいる気持ちになる丁寧に角折りされた新書本、スズメの飛び入り参加や寺山記念館への脱線、そしてヘアスタイルを決めあぐねている人に温故知新な美容室の斡旋まで行ってしまった185(ヒトハコ)読書会、次回は八月・怖い話をテーマに開催予定です。
                       先着順ですので参加ご希望の方はお早目のお申し込みを。

                      司会:嵐田
                      記録:深瀬






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